予防接種・健康診断
予防接種
予防接種とは、流行を起こしやすい、あるいは感染して発症することで生命に影響しかねない感染症に対して、事前に罹患するリスクを低減するために行うワクチン接種のことを言います。
ワクチンとは、感染症の原因とされる病原体(細菌、ウイルスなど)の病原性を無力化、もしくは極力弱めたとされる液体のことです。これを体内に接種することで、実際にその感染症に罹患しなくても、その病気に対する免疫がつくようになるというものです。これによって接種後に万一感染したとしても、発症しにくくなるか、発症しても軽症で抑えられるようになります。
このようにワクチン接種をすることは、自らの身を守るために行われるものですが、さらに感染症の流行(市中感染)を防ぐ目的として、ワクチンを接種できない方々へも感染させないという社会的な意義も持ち合わせています。
コロナワクチン
特徴
ワクチンの種類
本剤はメッセンジャーRNA(mRNA)ワクチンです。SARS-CoV-2のスパイクタンパク質(ウイルスがヒトの細胞へ侵入するために必要なタンパク質)の設計図となるmRNAを脂質の膜に包んだ製剤になります。本剤を接種し、mRNAがヒトの細胞内に取り込まれると、このmRNAを基に細胞内でウイルスのスパイクタンパク質が産生され、スパイクタンパク質に対する中和抗体産生及び細胞性免疫応答が誘導されることで、SARS-CoV-2による感染症の予防ができると考えられています。
接種対象者
・初回接種(1回目・2回目接種):12歳以上の方・追加接種(3回目接種):18歳以上の方
接種方法
通常は、三角筋(上腕の筋肉)に、1回0.3mLを筋肉注射という方法で接種します。
接種回数と接種間隔
- 1回目の接種後、通常、3週間の間隔で2回目の接種を受けてください。
- 接種後3週間を超えた場合は、できるだけ速やかに2回目の接種を受けてください。(米国やEUの一部の国で、1回目から6週間後までに2回目を接種することを目安としています。)
- 1回目に本ワクチンを接種した場合は、原則として、2回目も本ワクチンの接種を受けてください。
<追加接種>
- 2回目の接種完了から一定の期間が経過した方から、接種を受けてください。2022年1月から、医療従事者等や高齢者施設等の入所者等の接種間隔は6か月、同年2月からその他の高齢者の接種間隔が7か月となります。さらに、同年3月から、その他の高齢者の接種間隔が1か月短縮されて6か月となるとともに、64歳以下の方の接種間隔が7か月となります。なお、お住まいの自治体によっては、こうしたスケジュールが前倒しになる場合がありますので、自治体からのお知らせに留意してください。
- 1回目や2回目の接種に用いたワクチンの種類に関わらず、本ワクチンの接種が可能です。
有効性について
ワクチンを受けた人が受けていない人よりも、新型コロナウイルス感染症を発症した人が少ないということが分かっています。(発症予防効果は約95%と報告されています。)
なお、初回接種において、本ワクチンの接種で十分な免疫ができるのは、2回目の接種を受けてから7日程度経って以降とされています。また、追加接種から1か月後の中和抗体価は、2回目の接種から1か月後の中和抗体価よりも数倍高い値であることが報告されています。ただし、追加接種を受けても、感染を完全に予防できる訳ではありません。ワクチン接種にかかわらず、引き続き、適切な感染防止策を行う必要があります。
安全性について
まれに起こる重大な副反応として、ショックやアナフィラキシーがあります。
また、ごくまれではあるものの、初回接種では、ワクチン接種後に心筋炎や心膜炎を疑う事例が報告されています(※)。接種後数日以内に胸痛、動悸、息切れ、むくみ等の症状が現れたら医療機関を受診してください。
(※)1回目よりも2回目の接種の後に多く、若い方、特に男性に多い傾向が見られます。
追加接種では、1回目や2回目の接種と比較して、主に脇の下のリンパ節の腫れが多く(5%程度)報告されています。症状は軽く、数日以内に自然に回復することが多いですが、腫れがひどかったり、長引く場合は、医療機関を受診してください。
なお、本ワクチンは、新しい種類のワクチンのため、これまでに明らかになっていない症状が出る可能性があります。接種後に気になる症状を認めた場合は、接種医あるいはかかりつけ医に相談しましょう。
万が一、ワクチンの接種によって健康被害が生じた場合には、国による予防接種健康被害救済制度がありますので、お住まいの各自治体にご相談ください。
予防接種を受けることができない人、注意が必要な人
当てはまるかどうかや、ワクチンを受けて良いか、ご不明な方は、その病気を診てもらっている主治医にご相談ください。
また、当てはまると思われる方は、必ず接種前の診察時に医師へ伝えてください。
受けることができない人
・明らかに発熱している人(※1)・重い急性疾患にかかっている人
・本ワクチンの成分に対し重度の過敏症(※2)の既往歴のある人
・上記以外で、予防接種を受けることが不適当な状態にある人
(※1)明らかな発熱とは通常37.5℃以上を指します。ただし、37.5℃を下回る場合も平時の体温を鑑みて発熱と判断される場合はこの限りではありません。
(※2)アナフィラキシーや、全身性の皮膚・粘膜症状、喘鳴、呼吸困難、頻脈、血圧低下等、アナフィラキシーを疑わせる複数の症状。なお、1回目あるいは2回目の接種でこれらの症状が認められた方は、同一のワクチンを用いた追加接種を受けることはできません。
注意が必要な人
・抗凝固療法を受けている人、血小板減少症または凝固障害(血友病など)のある人・過去に免疫不全の診断を受けた人、近親者に先天性免疫不全症の方がいる人
・心臓、腎臓、肝臓、血液疾患や発育障害などの基礎疾患のある人
・過去に予防接種を受けて、接種2日以内に発熱や全身性の発疹などのアレルギーが疑われる症状がでた人
・過去にけいれんを起こしたことがある人
・本ワクチンの成分(※)に対して、アレルギーが起こるおそれがある人
妊娠中、又は妊娠している可能性がある人、授乳されている人は、接種前の診察時に必ず医師へ伝えてください。ただし、かかりつけの産婦人科医に確認していない場合でも、予診医によりワクチン接種が可能と判断された場合は、接種が可能です。
※本ワクチンの成分
▷有効成分
・トジナメラン(ヒトの細胞膜に結合する働きを持つスパイクタンパク質の全長体をコードするmRNA
▷添加物
・ALC-0315:[(4-ヒドロキシブチル)アザンジイル]ビス(ヘキサン-6,1-ジイル)ビス(2-ヘキシルデカン酸エステル)
・ALC-0159:2-[(ポリエチレングリコール)-2000]-N,N-ジテトラデシルアセトアミド
・DSPC:1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン
・コレステロール
・塩化カリウム
・リン酸二水素カリウム
・塩化ナトリウム
・リン酸水素ナトリウム二水和物
・精製白糖
接種当日の注意事項
ワクチンを受けた後の注意点
インフルエンザワクチン
インフルエンザを予防する対策については、手洗い、うがい、マスクの着用など、いくつかありますが、その中でも効果が高いとされているのが、インフルエンザワクチンの接種です。
ただ同ワクチンは、1回の接種による持続効果期間は約5ヵ月(接種後に効果が現れるまで約2週間必要)であること、また例年12月~翌3月までがインフルエンザの流行期間であることから、できるだけワクチンを有効にするためには、流行のピークとなる1月を迎える2週間程度前の12月中旬までに接種することが望ましいと言われています。
またインフルエンザワクチンは、年齢によって接種回数が異なります。13歳以上の方は1回の接種ですが、13歳未満のお子さんは計2回の接種が必要です。2回受ける場合は、1回目の接種から2~4週間程度空けてから2回目を打つようにしてください。なお同ワクチンは、例年であれば各自治体で10月から接種が開始されます。なるべく、お早めに接種を受けるようにしてください。
ちなみに接種をした後も、手洗い、うがいなどの予防策は怠らないようにしてください。
肺炎球菌ワクチン
肺炎は日本人の死因の第5位となっていますが、亡くなられた方の95%以上は、65歳以上の高齢者となっています。また、原因となる病原体(細菌、ウイルスなど)は様々ありますが、その中でも肺炎球菌の感染によって発症する患者さんは、全体の3割程度と言われています。
このようなことから、高齢者の肺炎球菌ワクチン(23価肺炎球菌莢膜ポリサッカライドワクチン)は定期接種に指定されており、大阪市でも費用の一部を助成しています。ただし、全ての高齢者を対象としているわけではありません。対象になる方など、詳細につきましては、大阪市の公式ホームページをご覧ください。
なお対象外という方でも同ワクチンの接種を受けることは可能です(全額自己負担となります)。ちなみに再接種を希望される場合は、前回の接種から5年以上は間隔を空けるようにしてください。5年未満で打つと注射部位に強い痛みがみられるようになりますので要注意です。
大阪市の「高齢者用肺炎球菌ワクチン接種のお知らせ」はこちら
健康診断
健康診断(健診)というのは、病気の発見や自身の健康状態を把握するために行われるものですが、そもそも病気の多くは、ある程度まで進行しないと自覚症状は出にくいので、わかりにくいというのがあります。さらに症状に気づいた頃には、かなり病状が進行していて、治療が困難、あるいは医療費の負担が大きくなるといったことが考えられます。
このような状態になる前にしっかり健診を受けることができれば、何らかの病気が見つかったとしても、早期発見による早期治療が行え、治癒率も高くなるほか、医療費も抑えられるようになります。
一口に健康診断と言いましても種類はいくつかあるわけですが、当院では主に特定健康診査(特定健診)と企業健診を行っています。また人間ドックのように時間をかけて検査をするといったことも可能です(この場合は全額自己負担)。詳細につきましては、お気軽にお問い合わせください。
特定健康診査(特定健診)
特定健診は、高齢者の医療の確保に関する法律に基づいて行われるものです。これは生活習慣病に罹患しやすいとされる40~74歳の世代を対象に1年に1回実施するというものです。主に生活習慣病発症の有無やメタボリックシンドローム※1の判定を中心に行っていきます。
特定健診で実施する主な検査項目ですが、大阪市の特定健診では、基本項目として、問診、身体計測(身長・体重・BMI・腹囲)、理学的検査(身体診察)、血圧測定、尿検査、血液検査(脂質、肝機能、血糖、腎機能)が行われます。また医師が必要と判断すれば、貧血検査、心電図検査、眼底検査もしていきます。
なお健診結果についてですが、大阪市の特定健診では、受診してから2~3カ月後に特定健康診査受診結果通知表が送付されます。その際に特定保健指導※2の対象と判定された方には、特定保健指導利用券も同封されています。特定保健指導の案内があった方は、ぜひ受けられるようにしてください。
※1 メタボリックシンドローム(通称:メタボ):
脂肪が内蔵の周りにつき、お腹がぽっこりした状態になっている内蔵脂肪型肥満の方(腹囲が男性で85cm以上、女性で90cm以上)で、血圧(収縮期血圧が130mmHg以上、もしくは拡張期血圧が85 mmHg以上)・血糖(空腹時血糖値が110mg/dL以上)・血中脂質(中性脂肪が150 mg/dL以上、またはHDL(善玉)コレステロールが40mg/dL未満)のうち、2つ以上の項目が該当しているという場合にメタボリックシンドロームと判定されます。このような状態は、動脈硬化を促進させやすく、放置が続くと、脳血管障害(脳梗塞 など)や虚血性心疾患(心筋梗塞 など)といった重篤な疾患を発症させるリスクが高くなります。
※2 特定保健指導
主にメタボリックシンドローム、もしくはその予備群とされている方を対象としたもので、生活習慣を改善することで、そのような状況を解消できるとされる方に行われます。専門のスタッフ(保健師、管理栄養士 など)の指導のもと、各々の患者さんにあったプログラム(食生活の見直し、日常生活に運動を取り入れる など)を作成し、それを3カ月程度実践していくという内容になります。生活習慣病を発症するリスクが高い方には積極的支援が、生活習慣病発症のリスクがあるという方には、動機付け支援をしていくという内容になります。
大阪市の特定健診はこちら
企業健診
職場健診と呼ばれることもあります。企業に所属する従業員は、労働安全衛生法によって健康診断を受けなくてはならないと明記されています。その法律に基づいて実施されるのが企業健診です。
ただ一口に企業健診と言いましても、雇入時の健康診断や定期健康診断といった一般健康診断をはじめ、特定業務従業者の健康診断、海外派遣労働者の健康診断などがあります。当院では、そのうち雇入時の健康診断と定期健康診断を行っています。それぞれの検査項目につきましては、以下の表をご覧ください。
- 雇入時の健康診断(雇入時健診)
事業者は常時使用する労働者を雇い入れる際は、その労働者に対して、下記の項目について、医師による健康診断を行わなければなりません(労働安全衛生規則第43条)。 -
- 既往歴、業務歴の調査
- 自覚症状、および他覚症状の有無の検査
- 身長、体重、視力、聴力の検査、および腹囲の測定
- 胸部X線検査
- 血圧の測定
- 貧血検査(血色素量、赤血球数)
- 肝機能検査(ALT、AST、γ-GT)
- 血中脂質検査(LDLコレステロール、HDLコレステロール、血清トリグリセライド)
- 血糖検査(空腹時血糖、またはHbA1c)
- 尿検査(尿中の糖、および蛋白の有無の検査)
- 心電図検査
- 定期健康診断(定期健診)
事業者は年に1回(深夜業や坑内労働などの特定業務従事者は年2回)以上、定期的に下記項目の健康診断を行わなければなりません(労働安全衛生規則第44条)。 -
- 既往歴、業務歴の調査
- 自覚症状、および他覚症状の有無の検査
- 身長、体重、視力、聴力の検査、および腹囲の測定
- 胸部X線検査、および喀痰検査
- 血圧測定
- 貧血検査
- 肝機能検査(ALT、AST、γ-GTの検査)
- 血中脂質検査(LDL コレステロール、HDLコレステロール、血清トリグリセライド)
- 血糖検査(空腹時血糖、またはHbA1c)
- 尿検査(尿中の糖、および蛋白の有無の検査)
- 心電図検査
※身長・腹囲、胸部X線、喀痰、貧血、肝機能、血中脂質、血糖、心電図の各検査については、医師が必要でないと認めた場合には、省略することができます